タキおばあちゃんが、昭和初期に女中奉公に出てから終戦をむかえるまでを回想する形で物語は進む。東京郊外のモダンな一軒家の平井家には、真面目な旦那様、美しく若い奥様、一人息子のぼっちゃんが住んでいる。タキはそこに女中として世話になる。山形の田舎から出てきた身には東京は華やかで、平井家の人々も良くしてくれるので、タキはこのモダンな小さいおうちにずっといたいと願う。戦争で世相が暗くなっていく一方で昭和モダンを生きる人々を清澄な筆致で描く。
太平洋戦争によってすべてが灰塵と化すまでの、ある意味浮かれていた昭和初期が生き生きと描かれている。新しいものがどんどん入ってくる時代がタキと時子奥様の関係を中心に語られるが、その根底にあるのは優しさだ。終戦後の高度経済成長という狂乱の時代の以前には、優しき人々の時代があった。舞台は戦争に向かう時代ではあるが、物語全体に暗さはない。優しき人々は清く強き人々でもあったんだろう。
今は亡き母親に、もっと昔の事を聞いておきたかったと思った。
映画は、松たか子と黒木華が良いですね。内容についてはコメントしませんが。