高校の数学教師の中島明彦は、梅が丘フィルハーモニーに入団するつもりが間違って梅が丘交響楽団に入ってしまう。そこは、老人ばかりの斜陽のオーケストラ。梅フィルは幻想交響曲とかやっちゃう立派なオーケストラなのに比べ、梅響はエグモント序曲さえままならない。若いというだけで指揮者に据え付けられてさあ大変。そこにロシアの国家機密に関係したスパイまで絡んできて、ドタバタの開演。
「登校の曲がり角でぶつかったトーストをくわえた女の子は転校生だった」級のベタなんだけど、そのベタさが心地いい。とはいえ、途中に「おや?」と思わせるトリックがあったり、終盤は息もつかせぬ展開になったりで、最後まで楽しく読める。
タイトルそのままの内容を期待しても裏切られない、楽しいエンタテインメント小説。
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