しまった。タイトルと東海林さだお風のカバー絵にだまされた。えらくヘビーな一冊だった。
四編からなる中短編集。どの主人公も生と死の間をたゆたっている、もしくは、生にも死にも属していない。もちろん生と死は単純な表裏関係ではないので、あらゆる事象がそうとも言える。
生に属していて生について考えるのは困難だ。時間は流れているので、現在の自分は一瞬で過去の自分になる。生について考えるとは、過去の自分のことを考えることに他ならない。もしそこで過去の自分も生について考えていたら、合わせ鏡のように永遠に生について考える自分を見つけるだけで、やがてラプラスの悪魔が現れて全ては無に帰す。
逆に死について考えるのは簡単だ。死は実態がないので、抽象的な、例えば「地獄」のようなイメージに定着させやすい。
ということは、死の側にいる人にとっては、生は簡単にイメージできるということなのか。
今まで、人が死に憧憬の念を抱くのはその後に再生があるからだと思っていたが、人は生を捉えるために死を望むわけか。
やるなあ、山崎ナオコーラ。