十二音技法なる作曲技法を発明しちゃった人。偉大でもあり、大いなる阿呆でもあります。
この技法が発明されるまで、音には偉さの序列があったんです。ハ長調なら、一番偉いのはド。次がソで、お次がミ。その次となるとシとファで、レとラは幕下。
いわゆる機能和声というやつなんですが、シェーンベルクの時代にはこの機能和声が崩壊し始めてました。みんなで窓ガラス壊してまわっちゃったわけです。
じゃあいっそ、偉いの偉くないのを取っ払って全部一緒にしちゃえばいいんじゃね、と無茶なことをやっちゃったのが十二音技法。オクターブの中の12個の音は全て平等としました。
考えとしてはいいんですが、いかんせん今までの音楽とあまりに違いすぎる。要するに、何やってるかわけわかんない。で、技法として持ってきたのがバッハの手法。モチーフを逆行、反行、転回などして曲を構築するってやつ。
なんというか、やっつけ感満載なんですが、この技法を発明して、シェーンベルクは「これで以後100年のドイツ音楽の優位性が保たれた」とか言っちゃいます。誇大妄想も入ってきましたね。
で、シェーンベルクに加えて、ベルグ、ウェーベルンを新ウィーン楽派と言ったりします。新ウィーン楽派の音楽が気持ちよくなってきたら、あなたも立派な現代音楽好きです。
「浄夜」は、シェーンベルクが十二音技法に足を突っ込む前の曲です。美しくも力強く、そして儚い名曲です。後期ロマン派として、ワーグナーやマーラーに続く作風ですが、この曲を聴いて、シェーンベルクってこんなメンタリティを持った人なんだとわかると、十二音技法以降の音楽も聴こえ方が変わってきます。
十二音技法以降の作品としては「月に憑かれたピエロ」をどうぞ。
ディスクは、まずカラヤンが新ウイーン楽派三羽烏の曲をベルリンフィルと録音した盤。それぞれの代表作かどうかは置いといて、さすがカラヤン、新ウイーン楽派の三人の曲をこれでもかというほどにロマンチックに仕上げてます。これはこれで素晴らしい。
こっちはブーレーズの盤。弦楽六重奏版としてはベストの誉れ高い演奏。なんというか、とんがってます。