中学校で習う音楽史の中で、ブラームスはロマン派真っ只中に生まれています。
ロマン派を簡単に言うと、音楽が貴族の物だった古典派の時代から、イギリス産業革命やフランス革命などを経て民衆の時代になって、すました音楽ばっかりじゃなくて愛を叫んじゃおうぜー自然を愛でちゃおうぜー神話とかを楽しんじゃおうぜー、てな感じで、やっぱ音楽ってみんなが楽しめる物じゃないといけなくね?と始まったもの。
ブラームスと同じ時代の、ワーグナーは楽劇なるものを作っちゃったり、チャイコフスキーはバレエでウハウハ、ドビュッシーは現代への扉を開けちゃったりしていたのに、ベートーヴェンを敬愛するブラームスは、ベートーヴェンの九つの交響曲に続く交響曲を構想して20年近くも悶々とします。
その間に、師匠のシューマンの奥さんのクララに恋しちゃったり、交響曲とか考えてるよりその恋心を曲にすればいいじゃんと思うんですが、そこがブラームスの堅物の所以たるところ。シューマンが亡くなって、クララもブラームスを悪くは思ってないのに、師匠への思いがそれを邪魔します。ああ、なんていい人。
で、ついに出来上がりました、交響曲第1番。これが凄い曲。人生の逡巡、そして希望。全てが詰まってます。改めて言います。凄い曲です。
おすすめは、まずはカール・ベーム指揮ウイーンフィルハーモニー管弦楽団。ベームは、ブラームスに友人のマンチェフスキーに作曲を習っていたというだけに、世界屈指のブラームス指揮者。重厚で壮大なブラームスは、お手本のようです。
そして、なんだかんだ言ってもカラヤン。ブラームスなのでカラヤンらしく豪華絢爛とはいきませんが、それでも素晴らしい録音をしてしまうところにカラヤンの職人魂が感じられます。
ブラームスとしては異色のミュンシュ&パリ管。まるでベルリオーズのような華やかなブラームス。パリ管だけに、管楽セクションが華麗で優雅。正統派のブラームスに比べると薄っぺらい演奏になってしまいそうなところを、まったく違うスタイルのブラームスに仕上げるところがミュンシュの手腕。
現代のスタンダード、ラトル&ベルリン・フィル。カラヤンとセルとアバドとバーンスタインを併せ持ったような、現代で聴ける最高峰のブラームス。このディスクはブラームスに交響曲全集ですが、買って損はないでしょう。
日本の誇る組み合わせ、小澤征爾&サイトウキネンオーケストラのブラームス。考えてみれば、アバド、メータあたりとポストカラヤンの座を争った小澤征爾が、このオーケストラのために集めた精鋭たちとの演奏だけに、現代最高の演奏のひとつです。